2006年02月24日

穴/山本亜紀子

内容(「BOOK」データベースより)
エロスと死が「穴」の向こうで鮮やかに反転する。しがない小説家のアパートに突如あらわれた二つの穴。以来主人公真木栗が猛然と書き上げたのは実は自らの死に際だった。第4回四谷ラウンド文学賞受賞。


官能小説の依頼を受けた真木栗が自室アパートの覗き穴から見える光景を元に原稿を書いていく話なのですが、これが面白かった。

覗き行為に嵌った男の堕ちていく日々を綴ったねちっこい話かと思ったけど少し違いました。
主人公真木栗の視点が案外冷静に語られてたのが好印象。真木栗は40歳近くになるけれど、それなりに整った顔立ちの持ち主。覗き行為も意外や冷めた視線で不潔感が感じられない。

真木栗の隣に引っ越してきたのは佐緒里という女性で、真木栗の好みのタイプ。
彼が新たに受けた小説は主人公(自分がモデル)が隣人(佐緒里がモデル)の私生活を覗く内容なのですが、真木栗が書き進めていくうちに現実世界でも小説と同じ筋書き通りに事が進められてることを知り・・・そこで、人間の欲が掻き立てられてしまうんですよね。

覗かれてるとも知らずに私生活をさらけ出す隣人と、それをこっそり覗き見る真木栗を想像すると、こっちが覗いてる気分になるんですけど・・・。

客観性を持たせるために配置された人物が真木栗を担当した成美だと思うのですが、成美の存在が必至であることも読了後に実感です。読み返してから、真木栗と成美の会話に工夫がされていることがわかります。

例えば、真木栗が佐緒里からもらった金魚を入れた瓶を見たときの成美の「先生、どうしたんですか?この冷蔵庫の上にある瓶の水・・・・・・」というセリフ。
それから反対側の隣人佐々木の部屋の音を成美と真木栗が同時に聞いていることで一つのミスリードを誘っていること。このミスリード、私、思いっきり引っ掛かりました。勘のいい人は引っ掛からないかな。

何だかんだいって哀愁ホロリで刹那の幸せが切ない。
作中の季節は夏。夏の短さと人生の儚さが悲しいくらい合ってました。

単行本は四谷ラウンドから出てるのですが、倒産のため(?)文庫版は角川ホラー文庫から出てます。これのどこがホラー?と思ったけど、最後のほうでようやく納得です。ホラーといっても怖くなく、不思議な感じ。

単行本のハードカバーで読んだのですが、表装が凝ってます。真ん中に穴開いてます。表紙開いたら、ギャー、蛭子能収デザインで大汗かいた男女の情交シーン。しかも汗の滴る方向が重力無視してる(笑)。いい感じに滑稽で、気持ち悪いです(笑)。

穴
山本 亜紀子

四谷ラウンド 2001-12
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posted by 桃鳥 at 22:48 | Comment(0) | TrackBack(0) | 書籍
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