2006年06月13日

怪笑小説/東野圭吾

内容(「MARC」データベースより)
仕事場に通う途中に思いつき、目の前にいる人々の心境を想像した作品「鬱積電車」。怪しい笑いが新たな不気味な笑いを呼ぶ9編からなるユーモアあふれる作品集。怪しい笑いに酔いしれたい方に最適。


『毒笑小説』と違うのは、本作には各編一つ一つに作者の十分な解説が付いていることですかね。9作品中から何作か感想を。

「鬱積電車」
満員電車内で人間ウォッチングをする人には心当たりがあるであろう話。
シルバーシートを狙う老婆、それを無視して寝たふりするサラリーマン、ミニスカギャルを視姦する学生、勘違い妊婦、妊婦に嫉妬する古株OL、遠慮なしの迷惑親子、きつい口臭を振りまくオヤジ・・・各々が他人の行動を観察して、各々が好き勝手妄想するという、人の本心を突いたような話でした。みんな自分の行動だけはしっかり正当化してるからシニカルです。

「おっかけバアさん」
ふとしたことから芸能人の追っかけに嵌ってしまい、それ以降食費を減らし、ファングッズや衣服、アクセサリーに有り金を注ぎ込んでいく一人暮らしの老婆のあわれな顛末。なんかね、いじわるばーさんみたいなパワーがありましたよ。

「一徹おやじ」
元ネタ『巨人の星』を知らないとあまり笑えないかも。親子の野球人生を一言でいうと“漢”。しかしながら話のオチは好色ネタでちょっと不意をつかれました。

「逆転同窓会」
生徒主催の同窓会で先生がゲストとして呼ばれることが一般的なら、先生同士の集まりで生徒を客として呼んでみようじゃないか、という発想が逆転同窓会。
呼ばれた生徒って30代半ばのいい大人でしょ。ゲストとして呼ばれてる立場でありながら恩師をほったらかしにして同級生同士でビジネスの話で盛り上がるのって大人のマナーじゃないよなぁ。

「しかばね台分譲住宅」
しろかね台分譲住宅vs黒が丘タウン
しろかね台の住宅地になぜか死体が!
マスコミに知られたら土地の価格が下がる!
そうだ、最近景気のいい黒が丘タウンの敷地に捨ててしまおう・・・てことで町内会長を筆頭に町ぐるみで捨てに行った死体が、いつのまにか舞い戻っており、それ以降、両住宅同士で趣味の悪い死体放り投げ合戦。その死体は肉片になるまで・・・。ブラックですよ。

「あるジーサンに線香を」
『アルジャーノンに花束を』(ダニエル・キイス・著)が下地になってます。
とある実験でじーさんの肉体が若返り、同時に精神も若返り、外の世界へ繰り出す様が面白可笑しく描写されているのですが、『アルジャーノンに花束を』の結末を知っているからこそ笑えない。
栄えるものには必ず衰えがくるのですね。

怪笑小説怪笑小説
東野 圭吾

集英社 1995-10
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posted by 桃鳥 at 01:28 | Comment(0) | TrackBack(2) | 書籍
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「手紙」 東野圭吾 毎日新聞社
Excerpt: 今度、映画化されるんですね。なんとも胸が苦しくなる、切なくなる、すごく暗い…けれどもこれ以上にない、感動作です。ある兄弟の物語。弟の進学を叶えるため、強盗殺人を犯してしまう兄。「犯罪者の身内」として、..
Weblog: 本 ホンはいいネ
Tracked: 2006-06-19 15:59

感想/怪笑小説(文庫)、毒笑小説(文庫)
Excerpt: 著者の洞察力と想像力、そして思考回路がわかりそうな短編集『怪笑小説』『毒笑小説』。これをお笑いといっていいのかは微妙な気がする、風刺が効いた物語たち。スルスル読めます。 例えば、満員電車の乗客の..
Weblog: APRIL FOOLS
Tracked: 2006-12-04 23:20
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